今回はかなりの「ベタベタ、日本料理的献立」です。
「変わったものより、スタンダードが良いのよ」と言われる常連さん向けです。個人的には別に変わった事をしている感覚は無いのですが(笑)。
スタンダードというか、定番の料理は自力がはっきりと出るのでごまかしは利きません。この緊張感もいいですね。春の食材を存分に楽しんでいただきましょう。
卯月吉日 献立
先附 胡麻豆腐 車海老 百合根 割醤油
造里 桜鯛 細魚 きす昆布〆 鮪 あしらえ一式
焼物 鮎並若狭焼と合馬筍炭火焼 こごみ胡麻和え
煮物 眼張の煮付 牛蒡 桜人参 針独活 針生姜 絹鞘 堅豆腐
揚物 春の香天麩羅 葡萄の新芽 枇杷の新芽 岩塩
止皿 赤牛西京焼 田芹味噌 フルーツトマト 千草野菜
食事 筍おこわと浅利の赤出汁 香の物
甘味 いちご
献立のポイント
定番中の定番、胡麻豆腐からスタートです。堅くも無く、柔らかくもない程度の練り具合で邪魔にならない程度に海老と百合根を添えています。
造里は細魚は大きめの国産を(韓国産もいてる)、きすは皮目に熱湯を掛けた後に白板昆布(ばってらに巻いてある薄い昆布です)で軽く締め、ゆるく昆布の風味をつけます。鯛は今回あまり大きくないですが身質が良い物を選びました。仕入れ当日しか刺身に向かないのは難点ですが、美味いに越したことはないです。
さて、鮪ですが・・・、本当は「初鰹」で行きたかったのですが、良品を見つけることができなくて悩んだ結果、「鮪中とろ」になりました。鰹なら何でも良い訳ではないので致し方無しです。
焼物は鮎並、あいなめです。鮎魚女、愛魚女と書いたり、油目とか言ったりもします。白身魚で焼いても、お椀、揚物など用途の広い魚です。若狭出汁を掛けながら焼いていきます。筍は一度炊いておき炭火で温めながら少し焦げ目がつくようにじっくり焼いていきます。
煮物は「尾頭付きの煮付け」です。あんまりやりません(笑)スタッフさんも三年位在籍していますが「初めてみた!」レベルの一品です。魚は眼張、地域によっては「春告魚」といわれる春の代表的な魚です。捌いて、骨とっても良いのですが何と無く味気ないので尾頭付きで一人一本召し上がっていただきました。
天麩羅は「春の香り」を楽しんでいただきたくご用意しました。巨砲の新芽、枇杷の新芽、ともに出回る期間も短く鮮度も落ちやすいのでタイミングが合わないと中々献立には載りません。爽やかな春の風情がある食材です。
肉料理は赤牛の西京焼です。あまり漬け込んで締まりすぎる(水気が抜けすぎる)と焼き上がりが堅くなりがちなので二時間ほど漬けるくらいです。肉の表面に味噌の風味が付き、中は牛肉本来の旨味が残る程度です。焼加減もレアに近い感じで肉らしい食感を残して焼き上げます。もう少し「味噌」の感じがほしい場合は添えてある「田芹味噌」と共に召し上がっていただくと田芹の風味もあいまって肉も風味も高まります。
食事はおこわです。親鳥のひき肉と筍で出汁をとり、おこわを蒸し上げます。筍はケチらず沢山使う、炊込ご飯もそうですが「具が大目」はゆるりでは基本中の基本です。浅利は肉が白味噌でしたので赤出汁に。すましでも良かったのですがおこわがしっかり味なので負けないようにくっきりした赤出汁にしています。
今回は常連さんでしたのである程度、好みも把握できていましたので「しっかり味」の料理が続いています。最後はいちごでさっぱりとといった感じでしょうか。
気が付くともうすぐゴールデンウイークですね。ご予約のお客様はなるべく早めにご連絡ください、市場休みになりますので。
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追記:この献立ってベタではないのでは?と後輩に言われましたが、どの料理も「基本」の日本料理です。変なテクニックなど何もありません。かなり「質実剛健」な献立だと思っている次第です。