「尼鯛を炊く|福岡、西中洲の和食、日本料理 ゆるり」


世の中には、常識と言われる物がある。

「白鳥は白い」
「桜はピンク色」
「豆腐は柔らかい」

間違いではないが、

黒い白鳥(黒鳥ね。)もいるし、
桜は正直言えば、ピンクより白に近い。
豆腐も凍り豆腐(高野豆腐)はまあまあ堅い。

「でた、あげ足取り!」
「天邪鬼」とか言わないでほしい。

料理をしていると、たまに良い意味で「常識」に背をむけることがある。あえてスタンダードに固執(というか古典料理とか好き)するときもあるが、「遊ぶ」というか「挑戦」というか。

例えば、簡単なはなし、

刺身は醤油とポン酢ではなく、味噌でもよくない?
自分の好みは「塩昆布」。液体ではなく「個体」。

田楽味噌とアボカド合わせたり、
スッポン出汁で海老真蒸炊いたり、
寅河豚を皮付きで揚げたり。

このレベルはよくやるので自分的にはあまりエキサイティングでは無くなってしまったが。

今回は「良い意味での裏切り」。

「尼鯛潮煮」・・・つまりは「白い煮付け」。

煮付けと言えば、黒い。そう、黒い。
でも、尼鯛のような淡い風味を活かすなら、
濃口はナンセンス。ならば、塩と薄口でやればいい。

遊び心と技術の融合。これ、結構、神経使う。

薄口は塩分強いので、詰めすぎるとアウト。
炊きすぎると尼鯛の風味が死んでアウト。
酒、味醂、砂糖のバランス悪いとこれまたアウト。
びびって弱火もテリ、艶が悪くなるのでアウト。

因みにレシピなんてない、いつも同じ大きさでもなければ同じ身質でもないので、正直あまり意味がない。

「潮煮」に関して(料理全般そうだが)も、これが正解と言う物もないので、酒蒸に近いものもあれば、白い荒炊きのようなものもある。献立次第で味付けは変わるので臨機応変に造るほうがいいと思う。まぁ、基本は塩味、でほんのり醤油が香る程度が「潮」らしい。

偉そうに講釈をたれたが、実はこれ、「古典料理」だったりする。かなり古い本に載っていたのを自分なりの解釈でつくっている。

でも、常識の範疇に収めきれない、すごく遊び心をくすぐられる料理。そして実によく考えられたというか、食材の持ち味を上手く活かした料理でもある。

常識に背を向けるとは、単純に
「変な物をつくる」ことではなく、

自由な発想を基本に忠実な技術を持って
新しい表現にする

ことかな、なんか難しい〆になってしまった・・・。
ただ、美味しい物をつくりたいだけなんだけどね。
ま、そういうことです。はい。

追伸:無理やり尼鯛を煮付けにしたわけではない。ちゃんと、「献立」として成り立たせるための「潮煮」です。
ずーっとさっぱりじゃ物足りないでしょ?

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