懐石、会席料理の用語 焼物編です。
日本料理、和食における「焼物」とは?
会席の中ではお酒のお供に一番相性が良い料理と思います。また、季節感を出しやすい料理でもあります。夏は鮎、秋は秋刀魚、冬は何でも美味しいです。一応の食べ方(作法的な事)、盛り付け(これも決まりごとや慣習)はありますが、今回は献立、御品書に出てくるがイマイチどんなものか想像できないものを解説していきます。
「焼く」と「焼き上げる」の違い。
焼物はただ「焼く=加熱」では美味しく「焼き上げる」事が大切です。火の入れ方、串の刺し方、などちょっとしたことで味が変わります。大量に調理する店舗では大きな専門的な調理機器を使用するところもあるとは思いますが、ゆるりでは炭、天火、直火、フライパンなどで料理や素材によって焼き分けます。何でもかんでも「同じ焼き方」をしても美味しくはならないと考えています。
それでは献立、御品書に良く出てくる焼物用語。
ゆるりでは「焼いたんです。」とだけいうこともありますが、大体は塩焼きです。その他は結構細かく、どんな味付けで、どんな火で、骨まで食べれるとか、カリッと仕上げてるとか、説明させていただいています。
若狭焼
薄口醤油をベースにした出汁に漬け込む、または掛けながら焼いたものです。少し醤油の香ばしさが付き、色合い的には素材の色が大事にされます。また、焼物自体にあまり濃い味を付けたくないときは薄めたり、刷毛で焼きあがりに少し塗ったりします。素材の味を重視した味付けです。
幽庵焼、柚庵焼
「ゆうあんやき」「ゆあんやき」と読みます。こちらは濃口をベースにした出汁に漬け込んだ料理です。あまり掛けながら焼く方法は取りません。本来は濃口合わせの出汁に柚子を入れて柑橘の風味を付けていたのですが最近では柑橘なら何でも良いという感じですし、入れていないお店もある思います。クセのある魚やこってりした魚によく使います。
昔はあまり良くない魚を使う時に醤油の濃い味と柚子の風味で臭いを抑える、といった消極的な手法として捕らえていてお店もあったようです。しかし、柚庵焼にしか出せない味もある、素晴らしい手法です。
西京焼
西京味噌(白)に漬けた焼物です。脂ののりが好く、身の柔らかい魚、甘鯛、さわら、まながつおなどに向いています。最近は「味噌全般」に漬けたものを西京焼とも呼ぶようです。確かに「味噌漬」より「西京漬」の方が美味しそうだから、でしょう。味噌のブレンドで味も変わるので理解できます。ゆるりでは子持ち鮎なども西京焼にします。なかなか美味しいですよ。
粕焼
酒粕を伸ばして漬け込みます。鱈や鮭など寒い地方に多く見られます。吟醸香、独特の甘味が持ち味です。酒焼(酒を掛けながら焼く)とは少しちがった旨味が加わります。香ばしさを足すために薄口を入れたり、甘味を足すために味醂や砂糖を加えて味を整えます。九州ではあまり見かけないといえば見かけない焼物です。
酒盗焼
カツオの内蔵の塩辛「酒盗」を使って出汁を取り、それを元に味を整え漬け込みます。かなりコクのある味わいになります。案外万能なので魚全般いけます。献立中の焼物にインパクトを持たせたい、ちょっと目先を変えたい時などに重宝します。
一度酒で沸かして出汁をとるので決して「塩辛臭かったり」「しょっぱかったり」はありません。焼物とは少し赴きが変わりますが、カツオを酒盗の出汁につけて半生に焼いた「カツオのステーキ」もお勧めです。
まだ色々あります。
ちょっと出てきた「酒焼」や「味醂焼(味醂干しではない)」など色々あります。また、これまでに書いたものを複合的に使ったものもあります。「味噌若狭焼」「白柚庵焼」「辛子西京焼」などなど。名前の無いものもきっとあります。しかし上記のものを知っていれば何となく想像はつくと思います。
美味しい焼物準備します。骨付きの時もあります。
ご予約はこちら 092-725-6870 ゆるり まで。
ネットでも予約できます
よろしくさんです。
追伸:骨なしが良いときは予約の時におしゃって下さい。因みに焼物の添えられているお供の料理は「口取」や「あしらえ」などと言われます。