胡麻豆腐、日本料理ではよく出てきますね。焼胡麻豆腐なんかをお店の名物にしている所もあります。先附でお出ししたり、椀や蓋物、揚物など幅広い用途で料理に使われています。スタンダードも美味しいですが、今回は胡麻豆腐を使った変り種を紹介したいと思います。
変り種と言っても「焼胡麻豆腐」や「胡麻豆腐の揚げ出汁」とは違います。
「すっぽん入り胡麻豆腐」です。
すっぽん苦手な方には拷問か嫌がらせの類とも言えます。ですので、すっぽんの苦手な方はご予約の時点でお伝えください・・・。個人的にすっぽん自体を特殊食材と考えていないので他の食材同様に普通に使ったりします。刺身はやりませんが、焼いたり、揚げたり、万能なので重宝する食材の一つです。
胡麻豆腐を練る時にすっぽんのほぐし身を入れるだけです。少しすっぽんの出汁を入れますがあまり多いと胡麻と喧嘩してしまうので味がするかしないか程度です。
ただ、先附には向きません。冷やすとゼラチンたっぷりのすっぽんの身をいれているので胡麻豆腐自体がやや固くなりますし、加減して胡麻豆腐を柔らかく仕立てたとしても、すっぽんの身自体が固く締まっているので「異物の入った胡麻豆腐」になりがちです。今回は湯煎で温め、身も柔らかく豆腐の食感も楽しめるようにお椀に仕立てました。勿論、椀の出汁はすっぽんです。変り種の「胡麻豆腐」料理でもありますが、変化球の「すっぽん料理」とも言えます。
春にはよもぎを入れて練り上げる「よもぎ豆腐」や夏には上に小豆をあしらった「水無月豆腐」、秋には萩の花を模した「萩豆腐」などもあります。個人的には普通の胡麻豆腐に和芥子を練りこんだ「芥子入り胡麻豆腐」が好みですがちょっと華やかさには欠けますね。
料理に正解はない、などとよく言われますが、残念なことに「失敗」はあります。完成度が高い料理に手を加えるのは職人といえどやはり勇気が要ります。しかしチャレンジしない限りは進歩も進展もありません。今後も失敗しながら「ええ料理」を作って行きたいと思います。