今日は献立の一部です。お祝い事でしたのでお赤飯を使った料理のお話です。
「蛤赤飯蒸し」は蛤を開いて赤飯を詰めて蒸し上げます。今回は殻に入れて蒸しましたが、赤飯の上に蛤を乗せただけでもお祝いの雰囲気もでますし、華やかな感じも漂います。
「なんだ、簡単ね」と思われがちですが、結構細かな仕事です。
似たようなものなら、レンチンする赤飯買って、蛤の酒蒸し乗せても出来ますが、如何せんレンジの赤飯はイマイチ旨味、風味に欠けますし、何より「小豆入ってないやんけ!」という大問題があります。なので「赤飯を蒸す」ところから始めます。炊飯ジャーでも炊けますが、おこわは基本「蒸す」物ですし、微妙に固さを調節できるので自分は断然蒸す派です。
蛤も単純に「酒蒸し」なのか、味のしっかりした「佃煮」なのか、はたまた江戸前の握りで有名な「煮はま」「肌煮」にするのか、その他の選択肢もあります。赤飯との相性は勿論ですがその他の料理との兼ね合いも考えて今回は少し控えめの味付けにした「肌煮」の手法を使い意赤飯と合わせました。千葉産の大振りな物を使って仕立てていきます。
赤飯は蛤に詰めるので多少蛤の水分(出汁)を吸ってしまいます。なので味は薄め、やや固めに蒸し上げます。少し固めに上がるであろう分量で蒸し始め、狙った固さになるように塩水を打ちながら蒸して仕上げます。固すぎても、柔らかすぎても蛤とのバランスがとれないので、少しづつ様子を見ながら見極めます。
蛤は酒、水で殻を開け蛤出汁をとり、貝は開いたら直ぐに身を取り出します。出汁に薄口、味醂等で味をつけやや煮詰めて冷まします。蛤の身を漬け込み味を含ませます。炊いてしまうとどうしても身が固くなりがちですので今回は漬け込み味を乗せています。赤飯を詰め、再度蒸すのですが温まる程度の温度でゆっくりと貝が固くならず、赤飯と上手く馴染むように蒸していきます。
一口サイズのお料理ですので「食べていくと美味しく感じる」ではない、一発勝負の一品です。赤飯と蛤のバランス、味だけでなく、食感であったり、互いの量など気を遣うポイントは多くあります。前菜の中の一品ですが、たかが一品ではなく、されど一品です。きっちり作って当たり前、手が掛かるのも当然で個人的には全く気になりませんが、同業者から言わせれば「やりすぎ」らしいです。
焼物はシンプルに伊勢海老を鬼殻焼きに。何せお祝いですから。
「蛤赤飯蒸し」も「伊勢海老鬼殻焼」もどちらも大切な一品です。メインだろうが脇役であろうが関係はありません。どちらもきっちり作ります、という個人的なお話でした。