「夏の鮎は焼け、秋の鮎は炊け」と昔は言われたようです。確かに夏の鮎は塩焼が美味しいように思います。秋の子持ち鮎は有馬煮や甘露煮、煮浸しといったお料理に仕立てる事が多かったようです。春の若い鮎は、塩焼、唐揚や天婦羅、酢浸し、南蛮、甘露煮など結構万能です。
近年では秋の子持ち鮎を塩焼など焼物に仕立てるお店も多くなりました。火が通りにくいので焼き方にも工夫は必要ですが夏の鮎とは違った美味しさがあり、中々良いものです。
今回は塩焼ではなく、味噌幽庵焼に仕立てます。西京漬(ま、味噌漬の類全般)では味が入りにくいので水分が多く、味のまわりが良い方法で仕込みます。西京味噌を幽庵地(濃口合わせの漬地、柚子等の柑橘の風味を付ける)でのばして漬け込んで行きます。
鮎の腹に切り目を入れます。味が入りやすくするためと焼く時に火が入りやすくするためです。その後薄塩をあてて1時間ほど置いて水で塩を落し、味噌幽庵地に漬けこみます。2,3日漬け込み頃合いを見て打ち上げて味噌を綺麗に落し、半日ほど風干しにします。脱水シートなどを使っても良いと思います。
焼いて行くのですが、味噌等で味を付けている上に身(というか真子)の厚みがあり中まで火がはいりにくいので一歩間違えると真黒焦げになりかねません。そこで焦がさず中まで火を入れるために笹の葉を巻いてから焼きます。笹は保水性に優れ、高温で長時間焼いても「炭」になりません。蒸し焼きの効果もあるので中までしっかりと熱を伝えることができます。「レンジでチーンでよくねー」とか安易に考える人もいると思いますが確実に爆発します。「ボベーン」の炸裂音とともにレンジの掃除が義務就けられますので覚悟が必要です。
頭と尻尾はやはり焦げるので自分は落とします。適宜包丁をし器に盛って完成です。火を通すことばかりに気をとられると真子がバサバサで美味しくなくなるのでちょっとコツが必要です。そこは秘密ですが。
なんともほっこりする味です。ただ焼き上がりのタイミングが難しいのでお時間を頂く事もあります。それでも食べて戴きたい晩秋の一品です。
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