杏 淋掛
曇天続きのようなのでさっぱりとしたお料理を。
昔ながらの古典の仕事で最近作った「南京淋掛」の元になったもの。作り方はシンプルだがタイミングが難しい。
「杏淋掛」
干し杏(ドライアプリコット)を半分に包丁する。
蜜淋掛を作る。
鍋(できればホウロウの鍋がよい)に水1:上白糖2、酢少々を入れ火にかける。ゆっくりと煮溶かしゆっくりと煮詰めていく。詰まってきたら鍋を濡れ布巾の上に移し、すりこぎで空気を入れながらゆっくりと冷ましていく。
蜜の色が白くなり粘りが出てきたら、杏に少しづつスプーンにてのせていく。そのまま冷まして完成。
この料理は蜜の詰め方で仕上がりが変わる。
ガンガン詰めるとカラメルみたいに色が着くし、詰めが甘いと杏が蜜を吸ってしまい白く上がらない。またゆっくり詰めたとしても、詰めすぎるとスプーンの上で固まって上手く杏にのせることができない。
感覚的な問題なので「何分煮詰める」とか「すりこぎでどの程度まぜる」とかは無意味。色とかすりこぎの感覚でしか仕上がりを判断できない。
無茶苦茶甘そうだが、空気を含んでいるのでさらっと口の中で解けていく感じ。杏の酸味とあいまって清々しい味わいだ。焼物の脇に良し、前菜にも良し(あまりやらないけど)、お茶うけにも良い。
自分はこういった「脇役」にも注目してくれればとても嬉しい。ただの付け合せに在らず。メインの食材は勝手に主張をしてくれるし、文字にしただけで目立つ。でもそれをさらに引き立たせる「脇役」はメインに劣らない価値がある。
小さな仕事を積み重ねて自分の献立は出来ている。
字に起こすと地味な事もあるがそれは其れで良し。
派手だが「内容の無い献立」より地味でも「美味しい献立」のほうが自分には合っている。ゆるりとはそういう店である。
追伸:早く梅雨が明ければいいのに。
TEL:092-725-6870(完全予約制)
————————————————