おこぜのお料理を
夏の時期、旬を迎えるといわれるおこぜ。
煮物やお椀で使うならば冬の「寒おこぜ」が美味い。6,7月は産卵期にあたるので冬に比べれば身は脂ッ気が少なく、さっぱりと食べれるので造りにするなら夏向きともいえる。もともと「脂のってて美味い」という魚ではなく、白身の本来持つ旨味を楽しむもので、感覚的には虎河豚に近い。
おこぜは「薄造り」を思い浮かべる方が多いだろうが今回は「湯洗い」とする。献立の構成的に最適だったのでそうするだけでそれ以外の理由はあまりない。
おこぜは薄造りにするにしろ、活物を選ぶ。締め物を選ぶ場合は締めた後、時間があまり経っていないもの、つまりは「死後硬直」が進んでいないものを選ぶ。洗いは細胞壁の中に水分をやや強制的に吸わせ、身を膨張させることでシャッキリした食感を生み出すと共に、クセ、余分な脂を落とす仕事であるので細胞が生きていることが前提であるため、死後硬直しているものは向かない(というより、洗いにならない)。
そもそも「洗い」は脂が強かったり、クセの強い魚に向く料理である。有名なところでは「すずき」、「鯉」、「鯒」など。やはり「夏向き」の魚がならぶ。おこぜもクセが強いので洗いには向いている。
今回は「身皮」(筋膜、ふぐ刺しの脇についてる湯引きみたいなやつ))をつけたまま洗いにしたいので「湯洗い」。身皮はそのままでは固いので火を通す必要がある。が、身自体にはあまり「熱」を入れたくないので段階を追って洗いとする。
まずはおこぜを捌き、骨を抜く。身皮を付けたまま「二枚落とし」にする。60℃に熱した湯にて「身皮の部分だけ」火をいれ、つづいて50℃程度の湯にて洗う。筋組織のタンパク質が熱で変質するのは約42℃~でタンパク質を固化させるためにまずは高温(60℃~)で火を入れ、その後、細胞に水分を取り込みやすくなる温度でもある50℃程度で洗う。実がちりちりになったら氷水に落とし熱の伝播を止め、更に骨からとった出汁で洗う。
水気を拭き取り、肝と皮を添えて盛り込む。さっぱりと「かぼす醤油」にて供する。
因みに高温のお湯に身を入れたら、「湯洗い」ではなく、「湯引き」ですある。違いは「タンパクが固化しているか、否か」である。物によっては「湯引き」の方が向いているものもあり酢味噌なんかで食べるのも中々美味い。
おこぜは薄造り、洗い、どちらも甲乙つけ難い。どちらにしろさっぱり、美味しく召し上がっていただきたいものだ。
追伸:今日は本当に天気が良かった。が、明日の仕込みと器の釉薬掛けをしていたので室内活動が多かった、残念。
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