よく和食では、はじめに出される料理を、
「先付」「お座付き」「お通し」などと言われる。
「小鉢」は本当は少し違うけど使う店もある。
献立上、便宜的に使う場合が多いので、お客様が分かりやすければそれでいい。やってる人がわかっているならだけど。
因みに、
先付の後に出す場合は「前菜」。
先付けを出さずに供する場合は「前肴」
ということが多い。
今回は
雲子梅味噌酢 葱、赤卸、 のれそれ自家製塩辛
豌豆葛煮 土筆、 蛍烏賊酒盗漬、 蕾菜雲丹鋳込
桜花馬鈴薯と鳥肝博多、 砂肝文化蒸
と言った内容だ。
旬は漢字で「10日間」を意味する。月を「上旬」「中旬」「下旬」と言ったりするのもそこに由来する。これに関連してか料理の旬も3つに分けて、「はしり」「旬」「名残」と言ったりもする。
「旬」は最盛期、「はしり」は出初、初物、「名残」はそろそろ終わりと思っていただけば良いかと思う。
和食の板前として自分が考える「旬」とは
「季節感と風情を加味して美味しいもの」
である。
春なので「桜鯛」を例にとれば、
養殖は論外として、身の栄養を摂られる産卵期の前の「春」より、産後、栄養を蓄えた「秋」の方が「旨味、脂のノリ」だけを比較すると美味い。
しかし、「桜を愛でる文化」を持つ日本人からすれば、
婚姻色で「桜色」をした鯛は別物。季節感と風情が合さって、物質的な「旨味」とは別の「美味さ」になる。
また、そのあっさりとした味がこの季節の淡い味に向いているというところもある。
「初鰹」も同じ。
「脂」だけ考えれば、秋の「戻り鰹」のほうがのっている。しかし、「初鰹」のさっぱりとした美味しさは「脂」とは違った「風情のある」旨味である。
「本来の旬とは10日間しかないものだ。」
という名言が板場にはあるくらい日本人は「旬」を大切に考えてきた。
お店と家庭では大きく違う部分もあるが、
一般的に「旬」とは「食べごろを向かえる最盛期で、手に入り易くお手ごろな値段」と考えて良いし、そして昔から上手に季節と付き合ってきたのだと思う。
はしりの時には近付いてくる季節を
名残の時期には去り行く季節を楽しむ。
これこそが和食ならではの楽しみ方だ。
追伸:自分は「アンチ養殖」ではありません。自分が美味いと思えれば「養殖」であっても使いますし、安全を担保するために使うこともあります。
TEL:092-725-6870(完全予約制)
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